交通事故の被害者が検察庁から呼び出しを受ける理由とその際に行われること

2019-11-25

交通事故の加害者となった場合、捜査の対象として検察庁が取り調べるために、呼び出しを受けることになるでしょう。検察庁は刑事事件の捜査機関であり、被害者を死傷させる交通事故は、傷害罪や過失致死罪が成立しうる重大な犯罪だからです。

しかし、検察庁からは、加害者だけでなく被害者にも呼び出しがかかることがあります。

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交通事故に検察庁が関わる場合とは

検察庁とは、刑事事件で被害者側に立って加害者を告訴する職務を担っています。交通事故においても、加害者がわざと被害者を死傷させたと認められれば、故意犯として殺人罪や殺人未遂罪、または傷害罪が成立する可能性があります。

交通事故を装って被害者の所有物を壊した場合には、器物損壊罪も成立しうるでしょう。多くの場合は、加害者の過失による交通事故と言えるので、過失運転傷害罪や過失運転致死罪のほか危険運転致死傷罪が成立することがあります。

こうした犯罪が成立しうる場合には、検察庁が捜査して告訴するかどうか判断するのです。検察官が告訴の必要性を認めれば、加害者を被告人として起訴し刑事裁判にします。検察官は被告人の弁護人と対峙して有罪を主張し、被害者の勝訴のために尽力するのです。

交通事故の被害者の意思確認のため検察庁が呼び出すとき

検察庁は、交通事故の事実認定をするため、証拠が不十分な場合などに被害者から聴取を行うこともあります。その可能性は非常に低いですが、証拠の不明な点を確認するために被害者の証言が必要になることもあるのです。

たとえ犯罪が成立する条件がそろっていても、起訴するかどうかは検察官に委ねられており、これを起訴便宜主義と言います。当該交通事故が過失運転傷害罪等の犯罪成立要件を充たすとしても、被害者が起訴する意思を持たなければ検察官は起訴を見送ることが多いのです。

そのため、被害者側に起訴する意思があるか確認しなければなりません。また、検察官は被害者が加害者から圧迫干渉を受けて起訴の意志を鈍らされているのではないかという疑いを持ち、被害者本人と会って起訴についての真意を確認することが求められることもあります。

民事賠償の交渉が進んで合意に至りそうかどうかという点や、加害者が被害者に謝罪しているかどうかという点も、検察庁の関心の対象となって呼び出しの理由になります。

もちろん、検察官が起訴しないからといって、被害者が加害者に民事上の損害賠償できなくなるわけではありません。被害者が死傷したら、民法上の不法行為の損害賠償請求権を行使して、治療費や慰謝料を請求することができます。

賠償金額について当事者同士で示談が成立しなければ、民事訴訟を起こして加害者の賠償責任を追及することが可能です。

交通事故の被害者を検察庁が呼び出し、起訴や不起訴に関する決定を伝える場合

検察官が起訴の要否について検討した結果、起訴か不起訴かの決定について被害者に報告しなければなりません。時には被害者が強く起訴を希望しても、検察官の判断で不起訴にすることもあります。どんなに被害者が強い訴追意思を持っていたとしても、証拠が十分でなかったり当罰性に欠けると検察官が判断したら起訴しなくても良いのです。

被害者の意思に反して不起訴にする場合には、その理由を被害者に説明する義務を検察官は負います。検察庁は被害者を呼び出す必要が無いと判断した場合には、書面の送達等の手段により起訴または不起訴の報告をすることになっています。

検察庁が起訴を決めたら

起訴を決めた場合には、検察官が被害者に今後の刑事訴訟の手順について説明します。刑事裁判の場合は、公開の法廷で審理を行うことや、原則として被害者自身に出廷の義務は無いことを伝えます。ただし、被害者側の心情を検察官から伝えてもらうことができます。

また、審理の過程で被害者の証言等が必要な場合には、被害者にも出廷を求めることがあります。被害者が自ら出廷を望む場合には、法廷での発言の機会について検察官が説明します。裁判官が被害者に発言を求めた時以外は、被害者が発言や質問をすることはできません。

検察庁に加害者が出頭する場合とは

検察庁は捜査の指揮を取り、原則として加害者から事情聴取をするために呼び出さなければなりません。逮捕の必要があるような重大事故の場合には、事実認定のため検察庁が被疑者を拘束して厳しい取り調べを行うこともありますが、通常の過失に基づく交通事故では書類送検だけで在宅起訴となることが多いでしょう。

不起訴にするか罰金刑にするか判断に迷う場合、検察庁は加害者を呼び出すことがあります。書類送検となった後不起訴になったら、検察庁は被害者にその旨を通達する義務を負いますが、加害者に対してはその義務を負いません。

したがって、加害者が検察庁の決定について知りたい場合には、自ら検察庁に問い合わせる必要があります。書類送検された後も起訴状が届かず不起訴かどう問い合わせた場合、不起訴が決定していれば教えてくれることもあります。

検察庁からの呼び出しに応じなかった場合

検察庁から呼び出しがあったにも関わらず、被害者が応じなかった場合も特に被害者が罰せられたり不利になることはありません。ただし、被害者が加害者に対して厳罰を求めている場合には、被害者が呼び出しに応じないと事実認定が不十分となり処分が甘くなる可能性を否定できません。

したがって、被害者は検察庁からの呼び出しに応じて来庁することが望ましいと言えるでしょう。

加害者が検察庁からの呼び出しに応じないと、たとえ任意処分であっても加害者に不利な展開になるおそれがあります。もし刑事裁判になった場合、被疑者が検察庁からの呼び出しに応じなかった事実は裁判所の心証形成に悪影響を与えることがあります。

裁判所は、被告人の態度など全趣旨について自由に心証を形成することが認められているからです。特に、先述した通り軽微な交通事故の加害者を呼び出す場合は、不起訴か罰金刑かを決める手がかりを求めているケースが多く、加害者が呼び出しに応じなければ不起訴ではなく罰金刑となる可能性が高まるでしょう。

検察庁からの呼び出しには積極的に応じましょう

検察庁は加害者に正当な処分を下すため、当事者から事情を聴いて事実認定に正確さを期すよう努めています。

そこで、検察庁から呼び出しがあったら、交通事故の被害者の立場であっても積極的に協力しましょう。呼び出しに応ずることによって、被害者が不利になることは滅多にありません。

むしろ、被害者側の主張をきちんと行える場と捉えて、刑事処分に関する自分の意見を述べることが大切です。